融解離脱

頼むから愛してクレメンス

同意できない触れていない

わたしが、人と好きな人が被らないように生きてたことを、思い出した。ずっと忘れていた。辛くなって気付いた。嘘をついていたのはわたしの方だと。具合が悪くて、もたれかかりながらシャンプーをしていた。風呂場のハゲた塗装のタイルが「遅いよ」と言っていた。






小学生から中学生にかけて、すごく仲が良い友達がいた。家も近くて、いつも遊んでた。「親友」って、お互い言ってた。

中学1年生の頃、その子と好きな男の子の話になった時に、同じ人が好きだとわかった。

野球部のモテる子だった。友達もわたしも、その男の子の連絡先を知っていて、メールしていた。そして、友達とその男の子はいつの間にか付き合っていた。

結果的に、わたしと友達は仲が悪くなった。お互い悪口を言い合ったし、わたしも悪いことばっかりした。

そして1年後に仲直りしたけど、その子とはもう、「親友」には戻れなかった。

中学2年生になって、クラス替えをして、わたしは友達と遊ぶのをやめて、毎日1人で過ごすことにしていた。そんな中話しかけてくれたのがテニス部の部長候補のイケメンだった。その人はめちゃくちゃモテた。だけど縁があって、わたしはその人から告白されて付き合った。自慢だった。そんなに好きじゃなかったけど、モテる彼氏がいたのはステータスだった。だけど、女からめちゃくちゃイジメられた。トイレにわたしの名前と「死ね」が書かれた。「わたしが好きだったのに!」と面と向かって泣かれた。彼氏はいつも女の子から告白されていた。楽しい思い出もあったし、同じ高校に行こうねと約束して、頭の悪いわたしは本当に頑張ってその高校に入れたけど、彼氏は進路を変えていた。ほぼ自然消滅に近い形で別れた。

そしてわたしはその頃、なんでも相談できる男の子ができていた。わたしは、彼氏がいたけど公園で手を繋いだ。その男の子にも彼女がいた。自分の気持ちがわからなかった。でも数年後にわたしはこの人が好きだったと、わかった。遅いし、最低だった。


高校に入ってからは友達を大切にした。そして、この頃から「絶対にみんなが選ばない男の子を王子様と崇める」遊びを始めた。陸上部の背が低くて華奢で、目が細くてすぐにキレる男の子を、ひたすら構った。友達から「え〜趣味悪いよ」と笑われていた。それが嬉しかった。もう誰にも取られないと思った。その男の子とは付き合わなかった。正直、普通に話せる同級生の男の子の中に、いいなと思っている人がいた。だけど彼女がいた。その男の子は男女問わず好かれていた。わたしは友達でいることを選んだ。もう誰にも、奪われないように。




その流れを汲んだ20歳からの恋愛だった。それまでもネットやTwitterで彼氏みたいな人を作る遊びもした。もちろん長続きはしなかった。ヘタクソだった。何もかも。

そしてごめんなさい。今まで、人気がない人なら、狙える。みんなが嫌という人なら、奪われない。いける。そう思っていた。芸能人でも彼氏でもなんでも。友達に否定されるたびに嬉しかったのは、そういうことだったんだと、昨日初めて気が付いた。だからわたしは簡単に「好きだ」と言った人を貶すことができた。本当に好きなものはみんなと一緒だった。戦いたくなかったから。わたしだけが良かったから。本当は好きなんて思ってないくせに。届くものが、良かったから。友達を失いたくなかったから。




シャワーが頭からつま先まで落ちる。排水溝に髪の毛が溜まる。生きてる気がする。水に感情は溶けない流れない。思い出したことを留めて置けるのは心の中と文字の中なんだと思った。